深読みの淵

漫画とかを独断と妄想で語ります。

『宇宙怪人みずきちゃん』を深読みする まるくんとみずきちゃんの隠れた関係

目次


0.  はじめに

 今回は、たばようさんの漫画『宇宙怪人みずきちゃん』(秋田書店)について書きます。
 この作品はとてもかわいい変態怪獣漫画です。倫理観にガンガン蹴りを入れられる読書体験ができる上、怪獣ものの特撮のパロディとしても秀逸で、知る人ぞ知る異色作にして傑作です。単行本2巻で完結していて読みやすいですし、未読の方はぜひ読んでみてください。

 さて、ここからはネタバレ全開で内容を語ります。
 今回深読みと妄想で語るのは、2人の主人公であるみずきちゃんと、まるくんこと水乃まるの関係についてです。
 まるくんは物語が始まる前からみずきちゃんに懐いており、「すき」(1巻p.12)だと公言して、どんなに雑に扱われても付いて回ります。最終的には、能動的ではないにしろ、自分の父親を含むそれまでの人間としての人生を全て捨てて、破壊者としてみずきちゃんの側にいることを選びました。その選択の理由付けとしても、「ぼくはみずきちゃんが好きだから」(2巻p.199)と述懐しています。
 一方で、みずきちゃんはまるくんに対して特に愛着や執着を抱いていないように見えます。しかし、町を破壊する計画が人にバレそうになると殴って隠滅しようとするみずきちゃんが、まるくんには自分から計画を話しています。また、いよいよ町を壊す前にみずきちゃんは、まるくんの部屋に迎えに来て一緒に海に行き、巨大ポコドンを上陸させる時にもまるくんを拾いに来ました。わざわざそういう手間をかけてでも、破壊の楽しみをまるくんと分かち合おうとしたわけです。何より、人類を破壊し尽くしたにもかかわらずまるくんだけは手元に残しています。つまり、みずきちゃんにとってもまるくんは何らかの意味で特別な相手なのです。
 このように、まるくんとみずきちゃんは付き合いが短いながらもお互いを特別視しています。そこに理由はあるのでしょうか。
 考えられる理由としては、まるくんはプナドラから生まれており、怪獣・怪人の要素をもっているということがあります。しかし、みずきちゃんが山の子と敵対したり、ニニニニリオンに至っては食料扱いしているように、知性のある怪人・宇宙人同士であってもお互いに友好的だとは限りません。
 まるくんとみずきちゃんの間には、より強い関係があります。具体的には、同じ怪獣の遺伝子を持つ親戚同士なのです。それを今から説明していきます。



1.  確認・まるくんとプナドラの関係

 まずは、作中で明示されたまるくんとプナドラの関係についておさらいしましょう。
 まるくんは、再生大怪獣プナドラと人間である水乃副隊長の交配で生まれた子供です。副隊長がプナドラの子宮内に突入して射精したことで誕生しました。
 検査の結果まるくんは99%ヒト(地球人)だという結論が出ました(2巻p.155)。逆に言えば、残り1%はプナドラの要素を受け継いでいるということです。
 交配したにもかかわらずプナドラの要素が1%しかないことについては、環境に合わせて形質が容易に変化するというプナドラの特徴に起因すると思われます。死ぬ間際のプナドラの生殖機能は副隊長の精子によって受精し、子供が発生しました。その際、副隊長の遺伝子が優先して発現したか、もしくは副隊長の遺伝子を模倣してプナドラ側の遺伝子が変異したということです。その根拠として、飛び散った肉片から発生した新生プナドラの外見がまるくんに酷似していたことが挙げられます。肉片からの再生は元のプナドラの有性生殖機能を経てはいないでしょうから、肉片に付着していた副隊長の精液の残滓の遺伝情報を体細胞が取り込んで、それを元に外形を形作ったと考えられます。分裂発生の際に混入した遺伝情報を元に形質を変えることができるのですから、交配発生の際に相手の遺伝子を優先して発現させることもあり得るでしょう。副隊長の遺伝子を優先させた理由としては、ヒトの方が地球の先住民で環境に適応している可能性が高いことや、副隊長が現に体内に侵入して本体を殺そうとしている強い生物であることが考えられます。
 要するに、まるくんの中のプナドラの要素が薄いことは、プナドラの遺伝子が生き延びる可能性を上げるためにそうしたと考えられるのです。加えて言えば、出生時点のまるくんの身体がプナドラの肉体からできていたことも確かです。また、水中で数分間呼吸が止まり仮死状態になった時に、胸部への雑な衝撃一回で蘇生して何事もなかったように活発に運動している(1巻p.100)ところを見ると、まるくんはプナドラの強靭な生命力をかなり色濃く受け継いでいると思われます。
 総合して言えば、まるくんは決してプナドラが少量混じっただけの地球人というわけではなく、あくまでヒトとプナドラの交配体なのです。



2.  プナドラとポコドンの関係

 ここからは、作中に明示されていない関係性を深読みしていきます。
 まずはプナドラと、ポコドンこと水棲怪獣チンポコドンの関係について考えます。
 この2種類の怪獣は、作中では直接関係していません。プナドラは作中時間の5年前より以前に発生し始めて人類社会のほとんどを壊滅状態に追い込み、副隊長に撃破されたものの絶海の孤島で生き延びていました。一方のポコドンは、おそらく最近になって飛来したみずきちゃんによって地球に持ち込まれ、町の破壊計画に使用されました。

 このように無関係に見えるこの2種類ですが、実は多くの共通点があります。
 1つ目は生殖形態です。ポコドンは雌雄同体で、任意の2体をつがわせることで、即座にほぼ同じ大きさの個体が口から生まれます。孤島にいたヒト型のプナドラも全く同じように、見た目には全員が男性器を持っていて、そのうちの2体でつがうことですぐに同じ大きさの個体が生まれていました。また、直方体状の巨大プナドラにも子宮があり、受精直後に赤ん坊の状態まで育ったまるくんが生まれたことから、交尾を行って即時に子供ができるのはもともとプナドラに備わっていた機能だと言えます。これに対して、数が減ったとはいえ数万体は残っていたはずなのに計画を断念せざるを得なくなったニニニニリオンは、これほど簡単に個体数を殖やすことができないと思われます。つまり、極短時間での生殖は怪獣や異星人に一般的な性質ではなく、プナドラとポコドンのみの共通項だということです。
 2つ目に、仲間意識のなさが共通しています。ポコドンもプナドラも生殖が簡易なので、作中では群れでいる場面が多いですが、お互いに同族だという意識はまるでなく、容易く共食いをします。プナドラは孤島で共食いによって群れを維持していましたし、ポコドンも共食いで大きくなっていきました。これも、ニニニニリオンが強い仲間意識を持っていたり、さほど知性を見せなかったヌシラも山の子の指示に従っていたことと対照的で、2種のみの共通点です。
 3つ目に、巨大化する点です。直方体形態のプナドラは多数の小さい個体が融合し、巨大な一体になりました。ポコドンも同様に、殖えた多くの個体が共食いを繰り返すことで一体の巨大ポコドンになりました。融合の方法こそ違えど、多数が合体して巨大化したという意味では同じです。このようなサイズの可変性もまた、ニニニニリオンの個体の大きさが全員ほぼ等しく、姿を変えるのに群体になる性質と対照を成しています。
 4つ目に、生命力の強靭さがあります。プナドラは「再生大怪獣」の名の通り、頭が無事ならば身体が欠損してもすぐに再生します。一方ポコドンは、部位が再生する描写こそありませんが、多少雑に扱っても意に介さない丈夫さがあります。頭蓋内に入り込まれて脳を掻き回されても生命活動に支障をきたさない様子は、体内深くに侵入されてなお余裕の態度だった巨大プナドラに近いものがあります。この2種については、身体機能が単純ゆえに多少のダメージは生命に影響を与えないという印象があります。
 5つ目に、生命活動の自己完結性も共通しています。ポコドンは水があれば成長と生殖が可能であり、有機物を他から摂取しなければならない地球の生物と違って独立栄養*1が可能な動物だと言えます。一方のプナドラも、いくら身体を削っても瞬時に再生することから、自身で有機物を作り出して体組織を再現しているものと思われます。孤島で共食いと繁殖によってただ1種で生態系を維持していたことも、この自己完結性に関連しているでしょう。
 6つ目に、食用になることです。ポコドンが美味で食用にされているのは序盤から描かれています。そしてプナドラも、2巻カバー下の怪獣大図鑑で、肉が美味で食用家畜として飼っている星があることが書かれています。これは同時に、脅威的な破壊をもたらせる怪獣でありながら、上手く管理すれば安全に飼育して利益を得られるという二面性が共通しているということでもあります。
 さらに7つ目の共通点として、他種との交雑が容易であることが挙げられます。プナドラの子宮内で副隊長が射精したことによってまるくんが生まれたのは先述の通りです。ポコドンについては、本編完結後に週間少年チャンピオンに掲載された番外編(単行本未収録)にて、みずきちゃんの下から逃げたポコドンが拾われた少年の精液を取り込んで半人半獣の子供を産むストーリーが描かれました。
 
 これら多くの共通点を説明するヒントとなるのが、星間移動する地球外生命体であるという8つ目の共通点です。ポコドンは、みずきちゃんが宇宙船で飛来した際に地球に持ち込んだものです。*2 プナドラについても、2巻カバー下の怪獣大図鑑にて星から星へと移動することが明言されています。
 そして、プナドラの大きな特徴の一つが、環境に応じて急激に形態を変化させることです。*3  つまり、星間移動したプナドラがある天体の環境に適応して変異したものがポコドンなのではないかと考えられます。
 孤島でのヒト型プナドラは一種で生態系を循環させており、おそらく二浜隊員が来るまで海を越えて島外に出て行ってはいませんでした。ということは、もともとプナドラは水環境が得意ではないと思われます。星間移動したプナドラが水に覆われた天体にたどり着いたとしたら、環境に適応するために大幅な形質の変化を行うはずです。そのようにして、水中での活動に適応し、水中呼吸が可能になり、成長や生殖といった生命活動を水の存在に依存するようになったプナドラの変種こそが、水棲怪獣チンポコドンなのではないでしょうか。*4
 生物として同じルーツを持つと考えれば、プナドラとポコドンの間の数多くの共通項に全て説明がつくのです。



3.  ポコドンとみずきちゃんの関係

 次に、ポコドンとみずきちゃんの関係について考えます。
 この二者は家畜(軍用・食用)と飼い主という関係にありますが、両者の間にも実は共通点・類似点がいくつもあります。それらを列挙してみましょう。
 1つ目の共通点は、活動が水に依存していることです。ポコドンの成長や繁殖に水が必須であることは、これまで見た通りです。一方のみずきちゃんも、体内の水が不足すると精神バランスが崩れ、不機嫌になります。このように両者は正常な活動に水を必要としますが、実は水がなくても死に直結するわけではありません。ポコドンは水がなければ成長と繁殖を行わずに現状を維持しますし、みずきちゃんも水分不足の際に海水がいいとわがままを言って真水を拒んだ上に自主的に海水を摂ろうともしなかった(1巻p.135)余裕を見ると、渇きが即座に生命の危機というわけでもなさそうです。このように、両者における生命活動と水との関係は、かなり細かいところまで類似しています。
 それと関係しますが、2つ目の共通点は水陸両棲であることです。*5 ポコドンもみずきちゃんも、陸上でも海中でも呼吸ができて活動が可能です。
 3つ目もここまでと関係しますが、呼吸器官の形状が似ています。みずきちゃんが水に入ると、後頭部の左右から触手のようなものが数本伸びます。1巻の怪獣大図鑑(p.193)には「耳のあたりから鰓(えら)のようなものを露出することで水中でも自在に活動できる」とあるので、これらが水中での呼吸器ということになります。ウーパールーパーなどにある外鰓(がいさい)なのでしょう。これらは、形・数・位置の全てがポコドンの頭部の突起物に類似しています。ポコドンのものも鰓であり、みずきちゃんのものと相同器官*6だと考えるのが自然でしょう。
 4つ目に、食性が似ています。みずきちゃんは基本的に生きた動物を食べる捕食者で、ある程度新鮮なら死肉も食べますが、植物性のものは食べませんでした(1巻p.151)。ポコドンも、同族のぶつ切りや大ダコの肉片など、基本的に新鮮な肉を食べています。*7  さらに、みずきちゃんを丸呑みし、まるくんも呑み込もうとしたことや、みずきちゃんがニニニニリオンの人間体をポコドンの餌にするために生け捕りにしておいたことを見ると、もともと生きた動物を食べる捕食者としての習性を持っているはずです。
 5つ目として、繁殖形態が似ている可能性が高いです。ポコドンは交尾をすると即座に出産します。誕生に卵を介さない胎生の生物です。一方のみずきちゃんがどのように生まれたのかは語られていませんが、ヒントはあります。それがおへそです。みずきちゃんにはへそが3つありますが、へそは胎児の時に母親からへその緒で栄養をもらっていた痕ですから、胎生である証拠です。さらに、へそが3つあるということは3本のへその緒で栄養をもらっていたと考えられるので、母胎内での成長はかなり早く、受精から出産までの期間は短かったのではないでしょうか。
 最後に6つ目の共通点は、同じ宇宙船で地球に来たことです。素直に考えれば、みずきちゃんの母星にポコドンが棲息していたということになります。ただ、ポコドンは前述のように他種の手で星間移動させられ、複数の星や種族で知られているようなので、みずきちゃんが母星外でポコドンを入手してから地球に来たとも考えられます。しかし、みずきちゃんがポコドンのことをよく知っており扱いも熟練している様子を見ると、やはり母星にポコドンがいて身近な存在だったと考えるのが自然だと思います。

 以上のように、ポコドンとみずきちゃんの間には多数の共通点がありますが、それはなぜでしょうか。
 6つ目の共通点により同じ星から来た可能性が高いので、同じ環境で進化した結果似た機能や習性を備えたとも考えられます。確かに、水への一定程度の依存や水陸両棲といった特徴は、水域が大きいが陸地もある、あるいは干上がることがあるような環境に適応すれば必然的に類似してくるでしょう。食性についても、動物型の生物が多数の環境であれば、両者ともに捕食者として進化するのは自然なことです。しかし、繁殖形態の類似と、何より鰓の形態が酷似していることは、直接に生物的な繋がりがあるからだと考えるべきでしょう。つまり、ポコドンとみずきちゃんは同じ祖先から分かれた生物だということです。
 この両者が生物的に近縁だという傍証として、ポコドンを繁殖させるのがちょっと苦手だというみずきちゃんの発言(1巻p.32)が挙げられます。ポコドンをつがわせるのは幼児のまるくんにもすぐできるくらい簡単で、現にみずきちゃんも簡単にやって見せているので、技術的にではなく心理的に苦手だという意味でしょう。
 考えてみてほしいのですが、人間の性交を目の前にすると動揺や嫌悪を覚える人は、ネコやカメやトンボの交尾を見ても同じように感じるでしょうか?  もちろん感じる人たちもいるでしょうが、その特に繊細なグループにみずきちゃんが入るとはとても思えません。要するに、対象が自分に近い生物だからこそ、その生殖行為に対して忌避感を抱くのです。
 それどころか、腐ったタコの肉片に上半身を突っ込んだり、ポコドンに関しても胃の中で寝たり脳を素手で掻き回したりは意に介さないみずきちゃんが、つがわせる時だけはゴム手袋まで装着していることを考えると、心理面だけでなく身体的にも現実に影響があるのかもしれません。つまり、ポコドンの精液が肌に触れるだけで受精して妊娠してしまう可能性があるほど、みずきちゃんはポコドンと近縁の生物だと言うことです。*8

 ポコドンとみずきちゃんの間の遺伝的な系統関係は、いくつか考えられます。
 まずは、同一の祖先からそれぞれ進化した可能性。水の豊富な星に飛来したプナドラが、成長と繁殖の早さに特化したポコドンと高い知能を備えたみずきちゃんの種族に枝分かれして環境に適応したパターンです。しかし、ポコドンとみずきちゃんの間にはプナドラにはない共通点も多いので、両者がプナドラから別々に進化した可能性はあまり高くないと思います。
 次に、ポコドンがみずきちゃんの種族から分化した可能性。ヒト型のみずきちゃんの一族が先に存在し、その中から脳と四肢が退化したポコドンが発生したというパターンです。しかしこれも、地球での生物進化と完全に反対の方向ですし、あまりありそうな可能性ではないと思います。
 それとは逆に、ポコドンから分化してみずきちゃんが生まれたというパターンが、最も可能性が高いと思います。その原因としては、環境の変化によって陸上での機敏な動きや高い知能が有利になったか、あるいは別の星に移動するために宇宙船を作り操縦する能力が必要になったなどが考えられます。もしくは、ポコドンが他のヒト型生物と交雑した末にみずきちゃんが生まれたということもありえます。
 そもそも、みずきちゃんに種族と呼べるような同じ形質の仲間がいるのかも分かりません。ポコドンやプナドラ、ニニニニリオンは群れが登場しますし、山の子やヌシラ、大ダコも、1巻の怪獣大図鑑では複数個体が存在する「種」であることを前提に書かれています。しかし、みずきちゃんだけは、出生や地球に来た経緯などが全く語られておらず、同種の他個体に関連する描写が何もありません。つまり、みずきちゃんは突然変異や一代のみの交雑によって、ポコドンから一体だけ生み出された特殊個体の可能性があるのです。*9  みずきちゃんの形状と機能を備えた生物は、宇宙にみずきちゃん1人だけなのかもしれません。
 いずれにせよ、ここまでの推測が正しければ、ポコドンとみずきちゃんはどちらもプナドラの遺伝子を継いでいます。環境への適応や遺伝子の取り込みによって急激に形質が変化するプナドラの性質を持っているならば、見た目が全く異なるポコドンとみずきちゃんが生物的に近縁だとしても、全く不思議はないのです。



4.  プナドラとみずきちゃんの関係

 2節ではプナドラとポコドンの繋がりについて、3節ではポコドンとみずきちゃんの繋がりについて述べました。ここまでの内容から、当然プナドラとみずきちゃんの間にも生物的に繋がりがあるということになります。
 ただ、前述のように、プナドラから進化したポコドンからみずきちゃんが生まれた可能性が高く、プナドラとみずきちゃんの間にはそれほど多くの類似関係はありません。とはいえいくつか共通点はあるので、今節ではそれらを見ていこうと思います。

 まずは、ポコドンも含めた三者に共通する特徴を2つ挙げます。
 1つは生殖形態ですね。この三者が全て卵を介さずに子供を産む胎生動物だということは、ここまでで述べた通りです。また、プナドラの怪獣大図鑑(2巻カバー下)には、「胎内には頭と触手があり、そこで直接子供を育てるため効率のよい繁殖ができる」とあり、実際に巨大プナドラの子宮内には頭部と何本もの触手が生えています(2巻p.149)。この触手が胎児への栄養補給にも使われるとしたら、へその緒の役割を果たす管が複数あることになります。へそが3つあるみずきちゃんが育った母胎も、そのような構造だったのではないでしょうか。
 もう1つ三者に共通しているのが、突起物の形状です。ポコドンとみずきちゃんの鰓の形態が似ているのはすでに指摘しました。この二者の鰓と形が似ているのが、プナドラの子宮内の触手です。円柱形で太さがほぼ一定、先端が丸くなっているのもそっくりです。他の生物の触手状器官といえば大ダコの腕ですが、それと比較すれば三者の突起物がいかに似通っているか分かります。また、ポコドンとみずきちゃんの鰓が後頭部の同じ位置から生えているのもすでに見ましたが、プナドラの子宮内頭部も、触手の根元と思われる管が後頭部から出ています。加えて、みずきちゃんの鰓は水に入ると伸びて露出しますが、伸縮が可能な性質はプナドラの触手と共通しています。これらのことを考えると、プナドラが胎児の養育に使っていた触手という機構が、水中活動に適応する過程で鰓としての役割を持つようになったのではないでしょうか。触手は表面積が大きい形状ですし、胎児の養育の際に母胎との栄養などのやりとりにも触手が使われていたとすれば、呼吸器としてガス交換に適応させるには最適です。

 次に、ポコドンには当てはまらないプナドラとみずきちゃんだけの共通項を3つ挙げます。
 1つ目は知性です。「とても頭が悪い」(1巻p.84)とされるポコドンと違って、みずきちゃんは言語でコミュニケーションを取り、宇宙船をはじめとした機械や道具を使いこなし、確かな知識と技術を元に計画を遂行します。これに対し、プナドラの知能は一見ポコドンに近いように見えます。孤島のヒト型プナドラは言葉を使わず、本能のままに食べ、生殖していました。直方体型の旧プナドラも、外見は人とコミュニケーションを取れる知性を備えているようには見えません。しかし、巨大プナドラの胎内にある頭部は言語によるコミュニケーションが可能で、人間的な感情を見せます。*10  加えて言えば、動物的な生活をしているように見えるヒト型プナドラも、食物を火で調理するという知性は持っています(2巻p.106)。総合すると、プナドラはもともと高い知的能力を持ち合わせているが、その知能が必要とされない環境では脳の形成にコストを割かず、ヒト型やポコドンのような知能の低い個体群になるのでしょう。しかし、高い知能を司る遺伝子は持ち続けているので、環境や状況に応じて発現し、みずきちゃんのような知性を持った個体が現れるのだと思われます。
 2つ目の共通点は、能動的な星間移動を行うことです。みずきちゃんは、自ら宇宙船に乗って地球に飛来しました。一方のプナドラも、どのような方法でかは分かりませんが、「星から星へと移動」(2巻カバー下)する習性を持つことが明言されています。どちらも、みずきちゃんの手で移入されたポコドンと違い、主体的に星を渡っています。その結果として地球に到着したことも同じです。
 3つ目は、積極的に破壊を行うことです。みずきちゃんは言うまでもなく、町を破壊すること自体を目的に行動しています。一方プナドラも、5年前の時点で防衛隊基地のある町以外の人間の拠点をほぼ全滅させました(2巻p.146)。「プナドラが住み着いた場所には他の生物が住めなくなってしまう」(2巻カバー下)とされますが、ただプナドラが繁殖しただけで人類は生存競争に負けて滅んでいったと考えるにはあまりに変化が急すぎますから、先住種の集団を積極的に壊滅させてから繁殖し、更地にした星の上を埋め尽くしていくのだと思われます。再生能力があるので積極的に攻撃しなくても他種との争いに負ける可能性は低いにもかかわらず、「全身を覆う目からの光線を備えて」(同)いるという殺意の高い進化を見るに、破壊そのものが半ば自己目的化した生物だと言えます。ヌシラ(山の子)やニニリン(ニニニニリオン)が交渉のための示威行動として建造物を破壊したのと比較しても、破壊そのものを目的として積極的に行うのは、プナドラとみずきちゃんのみの特異な共通項だと言えます。

 以上のように、みずきちゃんはポコドンに比べて身体的な特徴はプナドラに近くないが、思考や行動においてはプナドラに類似しています。これを説明する仮説を立ててみましょう。
 プナドラは水の豊富な星に適応してポコドンに進化しましたが、戦闘能力や知能は必要ない環境だったので、それらを持たない形態になりました。しかしその後、星がポコドンで飽和したか、あるいは環境の変化で住みにくくなったため、他の星に移住する必要が出てきました。*11 その目的のためにプナドラから変化して生まれてきたのがみずきちゃんです。宇宙船を作って操縦する知性も、星間移動や他種を滅ぼす破壊の志向も、他の星に移住して侵略し繁殖するという生態に特化したものです。ポコドンの遺伝子に刻まれていたプナドラの本能が危機的状況に応じて発現した、一種の先祖返りだと言えます。
 以上はあくまで想像ですが、一定の整合性はあると思います。
 いずれにせよ、みずきちゃんもまたプナドラとの共通点をいくつも持っているのは、今節で見た通りです。やはり、みずきちゃんがプナドラの遺伝子を受け継いでいる可能性は高いと言えるでしょう。*12



5.  結論・まるくんとみずきちゃんの関係

 ここまでの話をまとめると、まるくんとみずきちゃんの間はプナドラとポコドンを介して繋がったことになります。まるくん・ポコドン・みずきちゃんは皆プナドラ系統の生物であり、近縁な遺伝子を持っているということです。同一の祖先から分かれた2本の枝は、それぞれ全く違う進化のルートをたどった末に似通ったヒト型の姿を獲得し、別々に降り立った宇宙の片隅の星で、まるくんとみずきちゃんの姿で偶然の再会を果たしたのです。
 これが、まるくんとみずきちゃんがお互いを特別視する理由です。相手が同種の遺伝子を受け継いでいることを無意識に理解し、惹かれ合っているのです。

 まるくんがみずきちゃんを慕う感情の中には恋愛感情、有り体に言えば性欲が含まれていると思われます。もちろんまるくんはまだ5歳なので、第二次性徴も迎えておらず、ヒトとしてはまだ生殖への関心は生まれていないでしょう。しかし、プナドラは親とほとんど同じ大きさで誕生し、おそらくは生まれた直後から生殖が可能です。まるくんの中のプナドラの部分はすでに繁殖できる状態にあるわけです。その根拠として、同種とのみ交尾し、二浜や他の防衛隊員などの純粋な地球人には性的興味を示さなかったヒト型プナドラが、まるくんに対しては交尾行動を取った(2巻p.181)ことが挙げられます。プナドラはまるくんを生殖能力のある同種だと判断したのです。*13
 このように、まるくんの中のプナドラの部分は、近縁な異性*14であるみずきちゃんを生殖の相手として認識した可能性が高いです。プナドラの部分が抱いた性欲を、ヒトの5歳児の思考で言語化した結果、「よくわかんないけどすき」という表現になったのでしょう。

 一方のみずきちゃんのまるくんに対する感情は、これもまた生殖の相手と捉えていた可能性が高いです。前述のように、みずきちゃんはポコドンと生殖できる可能性が高いですが、彼女はそれを望んでおらず、ポコドンの繁殖に忌避感を抱いていました。おそらく、自分と同じような姿で知性を備えたヒト型生物の方が生殖相手として望ましいと思っていたのでしょう。だから、人類は滅ぼしてもまるくんだけは配偶者として残したと思われます。
 とはいえ、まるくんは地球人の血が濃いので、みずきちゃんも初めは彼を拒んでいました。それでもまるくんが好意を示し続け、「なんでもいうこときく?」(1巻p.17)という問いに頷いたので、計画を共有する同胞として認めたのでしょう。まるくんは自覚していませんでしたが、あれは「ヒトと怪獣どちらの帰属を選択する?」という問いかけだったのです。
 これらのみずきちゃんの感情を裏付けるのが、彼女が計画を開始したタイミングです。第1話の冒頭の時点でまるくんはみずきちゃんと面識があり、彼の「このあいだこのアパートに引越してきた*15」(1巻p.6)というモノローグがあるので、みずきちゃんはまるくんより前からアパートに入居していたと考えられます。さらに、第1話でまるくんがみずきちゃんを追いかけ回していた時間が数日間あります。にもかかわらず、その間みずきちゃんは町の破壊計画に着手していません。*16  本格的にポコドンの育成を始めたのは、まるくんに計画を話した翌日(第2話)からです。
 これは、破壊の後の目的に関係していると思います。降り立った星を侵略するプナドラの本能からすれば、先住民の社会を破壊した後にくるのは当然繁殖という最終目的です。しかし、みずきちゃんと同じ種族は地球にいませんし、彼女がもし突然変異的に発生した特殊個体だとしたら、同じ遺伝子と形質を併せ持った生物は宇宙のどこにもいません。ポコドンとは交配したくないみずきちゃんは、プナドラの遺伝子からくる破壊の欲求を抱えながらも、その後にセットでやってくる生殖に向き合いたくなくて、破壊計画の開始を先延ばしにしている状態だったのではないでしょうか。そんな時に自分と同じ遺伝子を引いているまるくんに出会い、味方になることを確かめたことで、彼を交配相手として認めたのでしょう。*17  そうして破壊の後の生殖を受け入れたことで、計画を始動させたというわけです。この考えが正しければ、まるくんがみずきちゃんに付いたことが人類滅亡の最後の引き金になったと言えます。

 以上のように、まるくんとみずきちゃんは無意識にしろお互いを生殖の相手と認識しており、性欲で繋がっています。
 最終話で人類社会を破壊し尽くした後に、2人は子供を作るのでしょう。更地になった地球上に、宇宙怪人の世界を築いていくのです。
 まるくんとみずきちゃんは新世界のアダムとイブで、この物語は怪獣と怪人たちの創世記なのです。

 ここまで書いてきて気付いたのですが、まるくんのみずきちゃんへの慕情を性欲ではなく母親への希求だと捉えることもできます。
 まるくんは生まれた時から母親がいません。父親からはネグレクトを受ける中で、不在の母への憧憬があったとしても自然なことです。そんな時に母方の遺伝子を引いている相手が現れ、しかも年上の女性の姿をしていたら、母親のイメージを重ねてしまっても無理はありません。
 さて、それではこの文章では、まるくんのみずきちゃんへの感情を生殖相手への性欲と捉えるか、母親への思慕と捉えるかということになりますが、両方を取ります。まるくんは性欲と母への情がごちゃ混ぜになったものをみずきちゃんに向けていると考えます。
 性癖(近年の用法)の坩堝たる本作において、欲望が二通りに解釈できるのならば、両方が重なっていると取るのが筋というものでしょう。
 『宇宙怪人みずきちゃん』は、おねショタでマザコンで人外の半異種姦の創世記だと結論付けて、この文章を締めたいと思います。
 ここまで読んでいただいてありがとうございました。




脚注(余談)

*1:【独立栄養】
 他の生物を食べずに自分で有機物とエネルギーを作り出すことを独立栄養と言います。代表的な独立栄養生物は、光合成を行う植物や藻類ですね。対義語は従属栄養で、他の生物を食べて有機物を取り込む必要があるものは、草食動物も肉食動物も含めて全て従属栄養生物です。ポコドンは捕食も行うので、正確には独立栄養と従属栄養の両方が可能な混合栄養生物だと言えます。

*2:【星間移動/ポコドン】
 作中のポコドンは、みずきちゃんの手で兵器兼食料として地球に持ち込まれました。1巻p.84のポコドンの怪獣大図鑑には「宇宙美食家の間では広く好まれている」とあり、詳しいことは分かりませんが、複数の天体の複数の種族に食材として重視されているものと思われます。つまり、食用家畜として他種に利用されることで分布域を広げているということです。自ら飛行したり宇宙船を作って飛ばしたりは決してしないだろうポコドンですが、他種の手を借りて星間移動を果たすのです。
 そうすると、ポコドンが非常に美味で硬骨がなく可食部率がほぼ100%の上に調理をせずに生で食べられるという、食物として優秀すぎる性質を持つのも、もともと美味だったプナドラが環境適応力によって、食用家畜という生存形態にさらに最適化したからだと考えることもできます。
 また、あおいちゃんが分析に用いた危険生物リストに、地球での出現記録のないポコドンが正式名称で登録されている(1巻p.158)ことも、複数の星でよく知られている生物であるという裏付けになります。ニニニニリオンについては既存のデータがなく(2巻p.37)、一から性質を分析していったことと比較しても、宇宙規模ではポコドンはメジャーな怪獣だと言えるでしょう。

*3:【形態を変化させる】
 この根拠となるのは「プナドラは周りの環境に合わせて繁殖し  合体  巨大化する」(2巻p.169)という副隊長の説明です。ここでは姿形を変えることまでは明言されていませんが、実際に直方体型からヒト型に変化していることから、「環境に合わせて繁殖」には形態を変えることが含まれていると考えられます。
 ヒト型プナドラは「見た目は人間に近いですが例の怪獣のデータと一致しました」(2巻p.168)、「分析の結果はまるくんとは逆」(同p.169)と言われています。つまり、身体組成や遺伝子の1%はヒト(外形を作るのに用いられた副隊長由来の遺伝子)だが、残り99%はプナドラのものという意味でしょう。組成や性質がほぼプナドラのままでありながら、外形は全く別のものになっているということです。このことからも、プナドラには状況に応じて形態を急激に変化させる性質がもともと備わっていたと考えられます。

*4:【変種】
 この場合、ポコドンはプナドラから進化した種、もしくはプナドラの亜種(同種の生物だが形質に違いがある集団)ということになります。しかし、形質が容易かつ急激に変化するというプナドラの性質上、同種か別種かという区別はあまり意味を持たないと思います。それどころか、「安定した交配が可能な生物の集合」という地球の動物に使われる種の定義自体が、完全に別グループの生物とも交配が容易なプナドラとポコドンに対しては当てはめられないと言うべきでしょう。

*5:【水陸両棲】
 ポコドンは地球生物で言えば両生類に近い見た目をしていますね。一番似ているのはアホロートルウーパールーパー)でしょう。一方みずきちゃんも、1巻の怪獣大図鑑(p.193)によると、少し生臭いという何となく両生類を思わせる特徴を備えています。

*6:【相同器官】
 別種の生物の身体の器官で、同じ祖先の同じ部位に由来するもの同士を相同器官と言います。例えば、ヒトの腕・ネコの前脚・鳥の翼は、形状も機能も全然違いますが、全て祖先となる魚の同じヒレが変化してできたものであり、相同器官です。逆に、ヒトの目とイカの目は、とても似通った構造と機能を持っていますが、生物の進化の過程で全く別々にできあがったものであり、相同器官ではありません。

*7:【基本的に】
 ポコドンは、まるくんが食べさせた焼きそば・クレヨン・洗剤・灯油などを平然と平らげました。しかしこれは、ポコドンがみずきちゃんと違って雑食なのではなく、知能が低いために与えられた物を何でも食べてしまうのだと思われます。

*8:【妊娠】
 なにせチンポコドンですから、生殖能力がどれほど強くても不思議ではありません。そう考えると、みずきちゃんがはめたゴム手袋にもメタファーを読み取りたくなりますね。

*9:【特殊個体】
 そもそも、みずきちゃんは元は違う形状の生物だったという考え方もできます。つまり、私たち読者が知るのとは別の姿で地球に降り立ったみずきちゃんは、潜伏のために原住民である地球人に擬態してあの姿になったということです。プナドラの変種であればそれぐらいできても不思議はないでしょう。
 この説の根拠の1つとして、作中でニニニニリオンが実際に地球人に擬態していることが挙げられます。
 また、みずきちゃんの外見が地球人にそっくりであることもこの説を補強します。異星人のニニニニリオンは地球人とは似ても似つかない姿ですし、同じ地球原産の山の子でさえ、ヒトとは身体構造がかなり違います。そんな中でみずきちゃんだけがヒトと見分けがつかない姿なのは、意図的に外見を似せたための必然だと考えるのが自然です。
 さらに、みずきちゃんが乗ってきた宇宙船の形状も、この説を補強する傍証と言えます。宇宙船は小型の円盤型で特に厚みが小さく、床に横たわった様子(2巻p.122)を見るとみずきちゃんの身長程度の高さがあるかどうかです。大気圏突入に必要な外壁の厚みを考えれば、内部でみずきちゃんが立つことはおろか座れるかどうかも怪しいです。もちろん宇宙飛行中はずっと横になって長期睡眠状態だったとも考えられますが、中でヒト型の生物が過ごしやすいデザインになっていないのは確かです。
 この擬態説の応用として、地球に着いたみずきちゃんはたまたま見つけた女学生を捕食し、取り込んだ遺伝子を元に体を再構築したという考え方もあります。この説を採用すれば、みずきちゃんが制服一着だけ持っていることに説明がつきます。
 さらにこの説を推し進めると、みずきちゃんの本体はもっと小さく、地球人の女学生に寄生して操っているのではないかと考えることもできます。人に寄生できるサイズならばあの宇宙船の大きさで十分ですし、他の生物の体内に入り込んで行動を操るというのは、みずきちゃんがポコドンに対して実際にやっていることです。
 ただ、これらの説を採用するなら、へそが3つあるという地球人と異なる形状をわざわざ取っている理由を説明しなければならないという弱点があります。

*10:【胎内にある頭部】
 子宮内に脳と感覚器を備えた頭部があるということは、当然その形態が胎児の成長に有利に働くということです。頭部が胎児の状態を直接見て判断し、触手を用いて繊細に養育するのでしょう。プナドラは環境などに応じて姿が大きく変わりますが、その性質を最大限活かすために、頭部が周囲の状況を判断して恣意的に胎児の身体を変化させているという可能性もあります。
 また、胎内の頭部が言語能力を持つということは、母体が胎児と直接コミュニケーションを取るということになります。子宮内で身体的に成長させるだけでなく、同時に教育まで行うということです。この「胎教」で出生時までに知性を獲得させるというプナドラの形質を、もしみずきちゃんの親個体が発現していたとしたら、ヒト型プナドラやポコドンが親とほとんど変わらない姿と大きさで生まれてくることも合わせて考えると、みずきちゃんは見た目よりも年齢が低い可能性があります。あれで実はまるくんより年下なんてこともあり得なくはないのです。

*11:【他の星に】
 みずきちゃんが生まれたのがポコドンの棲息している星であり、そこが水の豊富な環境だったのは確かだと思います。ただ、そこがポコドンの原産地かどうかは分かりません。ポコドンが他種の手で家畜として運ばれている可能性が高いのはすでに見た通りですので、そのように移入されて定着した星でみずきちゃんが生まれたというパターンもあり得るのです。

*12:【プナドラの遺伝子】
 プナドラの怪獣大図鑑(2巻カバー下)の最後には「最近人間型の種類のものも見つかったらしい」という一文があります。その横にまるくん型プナドラの画像がありますし、孤島で繁殖していた集団のことを指していると受け取るのが自然でしょう。しかし、怪獣大図鑑は作者の視点で書かれており、登場人物が知り得ないような情報まで載っています。そう考えるとこの記述は、プナドラの遺伝子を引いて最近進化したと思われる人間型の生物、すなわちみずきちゃんのことを指しているとも取れます。

*13:【同種だと判断】
 単に仲間と姿が似ていたから、という学習による勘違いの可能性もありますが。

*14:【異性】
 ただし、ヒト型の繁殖を見る限りプナドラは雌雄同体なので、みずきちゃんがもし男性型だったとしても、まるくんは同じように性欲を抱いていた可能性が高いです。

*15:【引越してきた】
 水乃副隊長が一人で乳幼児を育てられるとは思えないので、出生の事情も合わせ、まるくんは防衛隊関連の施設で育てられていた可能性が高いと思います。二浜やナナ河などの防衛隊員がまるくんの顔を知っていたのもそのためでしょう。5歳になってある程度自活できると判断されたため、父である副隊長の家で暮らすことになったと思われます。つまり、もともと防衛隊副隊長が一人暮らししていたアパートに、町の破壊を企む異星人のみずきちゃんが入居したのが、偶然の因縁だと言えます。ただ、ワーカホリックで家に帰らない副隊長とみずきちゃんの間に直接の関係が生まれることはなく、息子のまるくんが偶然の邂逅を果たしたというわけです。

*16:【着手していません】
 育成計画を始めていたならポコドンは複数体いるはずで、まるくんが加わってから単体精液を最初の一体に注入する必要はありません。その期間は計画の準備を進めていたと考えることもできますが、ポコドンを育てるのに必要なのは水と容器くらいで、何日も掛けて用意する必要はありません。操作装置とリモコンを作っていたという可能性もありますが、あれも無ければ無いでどうにかなる物なので、早く町を壊したいはずのみずきちゃんが計画を遅らせる理由にはなりません。

*17:【交配相手】
 とはいえ、みずきちゃん個人の欲求はあくまで生殖ではなく破壊にあるので、交配相手のまるくんのことも特に大切に扱うことはありません。まるくんが溺れて死んだと思った時に投げ捨てて帰ったのも、死んでしまったならもう必要ないという冷徹な合理性によるものでしょう。
 ただ、交配相手にポコドンよりまるくんを選んだように、みずきちゃんは相手とコミュニケーションを取ることをある程度大事にしています。それは彼女が「約束」を重視している(1巻p.16,17)ことや、「生きてたんだー  よかったねー」(1巻p.101)と感情移入を示すことにも表れています。何より、みずきちゃんは町の破壊という自分の好きなことを、まるくんと共有しようとしています。